我楽多ノート

自分の見た事や体験した事、感動した事を綴るブログ

ナノブロック de だるま落とし 【No.39】

失敗をしないために必要なものは慎重さではない。

そんな人生の真理的なものを教えてくれる玩具、「だるま落とし」をナノブロックで表現しました。




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ハンマーで胴体をインパクトした瞬間を切り取っています。
バランスを崩して倒れてしまうのか、それともギリギリ耐えられるのか、緊張の一瞬です!

カラーリングに決まりは無いので、全体的に可愛らしくなるよう色のチョイスをしました。
色の順番もさりげなく悩んだポイントだったりします。




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落ちていく黄色は下降気味にし、その上の黄緑と頭部は上向きに跳ねています。
この三つを平行にせず、バラバラの方向を向けることにこだわりました。

あえて平行からズラすと、ブロック的には組むのが難しくなりますが、この不安定性を表現することが最も重視した点でした。
天地の角度だけでなく、ねじれ方向もズラしています。




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上から見ると、黄色はほぼ完全に、黄緑は半分程はみ出していることが判るかと思います。
下から二段目の水色が、さりげなく土台のピンクから1ポッチ分だけズレているのも気づいて頂けるでしょうか。

ハンマーの柄をかなり大袈裟にしならせることは、制作前から構想していたのですが、組んでみるとまだ静止して見えるように思えました。
そこで、ハンマーの軌跡を描くよう帯を引き、漫画的な表現で動きを出すようにしました。




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こうやって下から見上げた構図は、迫力があって気に入っています。
今にも崩れそうなアンバランスさがたまりません(笑)

ご覧の通り、この作品はプレートに固定せず、完全に自立させています。
プレートを使うといかにも安定感が増し、この作品の面白みを失わせてしまうため、自立させることは絶対に譲れません。

吹き飛んだ胴体の位置をミリ単位で調整し、ギリギリ倒れない場所を慎重に探しました。
ハンマーを取り外すとばったり倒れてしまうくらいでして、ハンマーのせいでバランスを崩したように見える作品なのに、実はハンマーのお陰で重心が調整されてバランスを保っているという、不思議な作品なのです。







この作品「だるま落とし」はnanoblock AWARD 2017に投稿し、幸運にも優秀賞を頂くことが出来ました。

さきほどの4枚の写真は投稿用に選出したものだったので、カッコよく見える角度だけを抽出しています。
ぶっちゃけて言ってしまえば、だるまの固定に関して、可能な限り見えないように撮った写真をピックアップしたのです。




だってほら、裏側とか見せちゃうと子供の夢が壊れるから(?)




この記事では作品をグルっと回して、全部さらけ出していこうと思います。









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まずは真正面。
黄緑から関節パーツが生えていて、なにやらクリアで頭部と繋がっているのがモロ見え。。。

「どうせ頭部の背面にも関節パーツがあるんでしょ?」という皆様の心の声が聞こえてくるようです。
しかし頭部の接続に関しては、意外な驚きがあるとおもいますよ!









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さて、どうでしょう?

胴体部については、複数のクリアパーツがごちゃごちゃっと付いているのが見えてきましたね。
スマートさの欠片もありません。

でも頭部は?
どうやって接合されているか、この時点で解りますか?









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はい、ここ!




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1点支持!

頭部の背面に2段の逆スロープを使い、その凹に向かって、下から伸ばしたクリアの1×1を刺しただけです。
誓って言いますが、接着剤の類いは一切使用しておりません。

勿論あんまり斜めになっていると、頭部の重みを支えきれずにポッチが外れて落下してしまうため、なるべく地面に対して垂直に近い角度になるよう調整する必要はあります。
とはいえ、この大きな頭部をポッチ1個だけで支えられる理由は、凸と凹の寸法がとんでもなく高い精度で合っているからに他なりません。




これがッ!




これがッ!




これが『ナノブロック』だッ!
(バルバルバルバル)




支えをなるべく隠しつつピース数を減らすために、かなり無理をした組み方ではありますが、これが出来たときにはテンションがあがりましたね。
深夜に一人で「カワダの成型技術は世界一ィィィ!」と叫んだ程でした(笑)









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胴体の関節パーツは、こうして黄緑、黄色、水色の関節を一か所に集約することで、前方から見たときにまとめて隠すことが出来ます。









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最後にハンマーとだるま本体を接合する組み方についてです。









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このように、ハンマーは胴体に対してポッチが90°横を向くように組んでいます。
最少のピース数で、支えを目立たせず、これを実現した組み方がこちら。









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2段の逆スロープをこうやって組みました。
クリアパーツわずか2個で、90°の方向変換が出来ます。

「200ピース以内に収めなければならない」という縛りの中では、マニアックな組み方を編み出さざるを得なくなります。
もう無理! 絶対200ピース超えちゃう! という苦境の中でもがいていると、ふと天啓のように解決策が下りてくるんですよね。

最終的な造形だけでなく、そんな風に組み方を思いつく瞬間が最高に楽しいものなのです。







こんな長文を読んで下さった方には感謝致します。

ずいぶん長く書き連ねてしまいましたが、その理由は、この作品が自分にとって特に大切なものの一つだからです。

nanoblock AWARD 2017で受賞できたこともありますが、それ以外にもう一つの幸運に恵まれることになりました。




「だるま落とし」が商品として販売されます。




アワードの投稿作から選出された作品を商品化する、「アワードセレクション」というシリーズの一つとして店頭に並ぶことになります。

パッケージには、デザイナーとして自分の名前を載せて頂けるらしく、もう家宝になること間違いなしですよ。
こんなチャンスは二度と無いかと思い、危うく「本名でお願いします!」って言いそうになりました(笑)




商品においては、マニアックな組み方は全て排除され、多くの方にとって組みやすいよう修正されるようです。
是非とも手に取って頂き、本ブログとの違いを確かめてみて下さい。

自分の作品が少しでも多くの人を楽しませることが出来たら嬉しいですね。
この作品が発売されるのを、私自身も楽しみに待ちたいと思います。

それでは!